文書管理を「組織の知性の層」へ、NetDocuments CEOの構想
文書を保管するための文書管理システム(DMS)が、所内の知識や交渉の経緯を引き出す「インテリジェンス層」へ変わりつつあります。米国のリーガルテック番組LawNextで、ボブ・アンブロジ氏がNetDocumentsのジョシュ・バクスターCEOにこの構想を聞きました。収録はフロリダ州オーランドで開かれた同社の年次カンファレンス「Inspire」の会場です。
- 約800件の案件で検証し、コンテキストグラフでトークン費用は半減、現在は55%の効率化です。
- 最上位モデルでは70%近い改善で、AI料金は固定部分と従量部分の組み合わせへ向かうとの見方です。
- モデルやハーネスは入れ替わっても、組織データとその文脈は「残り続けるもの」との整理です。
文書管理から知性の層へ
バクスター氏は2017年に社長として入社し、翌年CEOに就きました。かつては特定分野の専門家を探すために、所内の廊下を歩いて回る必要があったと同氏は振り返ります。今は文書解析とセマンティック埋め込み(文章の意味を数値化する技術)をもとに「コンテキストグラフ」を作り、知識を引き出せると説明しています。
引き出せるのは文書だけでなく、誰が専門家か、ある結論にどう至ったかといった情報も対象です。担当パートナーが退職したあとでも、交渉の経緯をたどれるといいます。最大級の顧客はDMSに3億件の文書やメールを抱えており、この非構造化データを構造化して今後の業務に生かすことが課題だと述べました。そのため製品はDMSから「組織のインテリジェンス層」へ移りつつあると同氏は認めています。
モデル、画面、組織データ
法律専門職の作業場所はかつてWord、Outlook、ブラウザにほぼ限られていました。今はClaude、Harvey、ChatGPT Enterprise、Legoraなどに広がり、どれを使うかを組織でなく利用者自身が選ぶ場面が増えていると同氏は指摘します。同社は組織の記憶を作ることに集中し、どの画面からでも使えるようにする方針です。
同氏はAIを三つの層で整理しています。第一は大規模言語モデルで、同社はOpenAIやAnthropicと提携し、自らモデルは作りません。第二は利用者が操作する「ハーネス」で、Claude、Harvey、Legora、そしてNetDocuments自身がこれに当たります。モデルもハーネスも入れ替わるが、第三の組織データとその文脈は「残り続けるもの」だと語ります。
画面を持たない「ヘッドレス」化の可能性も否定しません。ある大手企業顧客では、弁護士2人がClaude上に独自の画面を作り、NetDocumentsと連携させて業務の大半をこなしているそうです。ただし個人が作った画面は全社に広げにくく、大組織は今後も同社の画面を求めるとみています。
文脈がもたらす費用差
同社は実在の組織の案件約800件をもとにコンテキストグラフを作り、検証を行いました。モデルとハーネスを固定して起案などの指示を送り、質の高い回答に達するまでのトークン費用を測ったものです。グラフがない場合の費用をXとすると、ある場合はその半分で済んだといいます。製品責任者のスコット・ケリー氏によると、改良を重ねた現在は55%の効率化に達しています。
高価なモデルほど削減幅が大きく、最上位のモデルでは70%近い改善が見られたとのことです。同氏はこれまでのAI利用料は補助的に安く抑えられてきたとみており、今後は費用が上がって事務所が効率を重視するようになると予想します。料金は一定の固定部分に従量部分を組み合わせる形に向かうとし、自社の価格も同様の方向で検討していると述べました。
定着の条件と働き方
同社の基盤でのAI機能の利用は毎月40〜50%伸びているといいます。2024年は対応に追われ、2025年は試行の年、2026年は実際に成果が出始めた年だと同氏は整理します。同氏によれば、導入の成否を分けるのは文書分類の体系(オントロジー)を整える体制と、研修を含む変革管理です。部署で2〜3人が使い始めれば、すぐに周囲へ広がるそうです。
知識管理は規模を問わない課題だと同氏は述べます。20人規模の事務所には知識を考える担当者がおらず、隣の部屋に最新の契約書ひな形を聞きに行っています。大規模事務所も多額を投じながら作業は手作業で、収益を生む人材を割いていると指摘し、2〜5年のうちに取り組まない組織は「苦境に陥る」と述べました。
5年後の実務について、同氏は相続分野を扱う友人の弁護士の話を紹介しました。必要だが価値の低い起案に多くの時間を使い、依頼者への助言にこそ喜びを感じているといいます。定型作業は自動化され、助言に重心が移るというのが同氏の考えです。社内でもClaude Codeなどの活用で、12か月を見込んだ表形式レビュー機能を1チーム3か月で完成させたと明かしました。
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