1976年の検索端末から2076年へ、法律家とAIの百年
2026年をひとつの世紀の中間点に置き、1976年と2076年の両側から法律実務とAIを眺める講演が行われました。米国のLawDroidが主催する第3回LawDroid AI Conferenceで、法律文書の自動化に早くから取り組んできたMarc Lauritsen氏が登壇しました。同氏は50年前の経験と現在の状況を重ね、今後を考える三つの流れを語っています。
- 2026年を世紀の中間点とし、建国200年の1976年と300年の2076年から法律実務とAIを眺めます。
- 1976年は6分単位の紙のタイムシートで、Lexis端末の演算子の達人は当時のプロンプト技術者でした。
- 過去50年の流れはハード、ソフト、弁護士の態度の三つで、態度は今後過度の依存や隷属もありえます。
1976年の法律事務所
Lauritsen氏はまず、米国が独立宣言から250年を迎える2026年を世紀の中間点に見立てます。50年前は建国200年の1976年、50年後は300年の2076年です。今の状況が過去と未来からどう見えるかを考えるための枠組みだと説明しています。
1976年、同氏はマンハッタンの法律事務所でサマーアソシエイトとして働いていました。サマーアソシエイトは夏季に事務所で働く法科大学院生です。最初に教わったのは、作業時間を6分単位で記録する方法でした。記録は3枚複写の紙のタイムシートで行い、電子メールもウェブもない時代だったと振り返ります。
それでも当時なりの技術はありました。同氏が紹介したのはLexisの専用端末です。オハイオ州のメインフレームに蓄積された判例や制定法を、キーワードで検索できました。ブール演算子や近接演算子を使いこなす人は「当時のプロンプトエンジニアリングの達人」のようだったと語ります。
計算機と歩んだ経歴
同氏は大手事務所の内定を辞退し、連邦地裁のロークラークを経て、低報酬のリーガルエイド弁護士になりました。担当したのは立ち退き訴訟の防御です。賃貸借の分野で働いた経験がAIへの関心につながったのではないかと、冗談まじりに話しています。
その後は臨床法学教育の教員を務め、1980年代半ばにハーバードのProject Periclesに参加しました。Digital Equipment CorporationとFord Foundationの助成を受けた研究です。定価87万5,000ドルのVAXミニコンピュータを使い、文書自動化やエキスパートシステムを開発したといいます。
同じ頃ボストンでは、法とAIに関する国際会議の第1回が開かれました。同氏も1991年のオックスフォード大会で論文を発表しています。この会議は2年ごとの開催から年1回に移り、次回はシンガポールで開かれる予定だと紹介しました。
変わらない情報の洪水
話は現在に戻ります。AIと法に関する情報があふれ、毎日のようにウェビナーが開かれている状況を、同氏は「圧倒されている」と表現します。ところがスライドに示したその描写は、同氏が1994年に書いた論文からの引用でした。当時も今と同じように混沌として予測しがたかったと述べています。
では1976年のLexis端末にあたる現在の象徴は何か。同氏はClaudeを使ったアプリケーション開発を挙げました。教え子の法学生は「ずるをしているように感じる」と話しているそうです。もう一つは基盤技術を包み込む形で高い評価額を得た企業の急増で、同氏はこれを「ステロイドを打ったラッパー」と評しています。
2076年を占う三つの流れ
同氏は時間があれば扱いたかった論点として三つを挙げました。人間とAIが同じ職場で協働する姿、多くの人が職を失った社会での弁護士の役割、脳とコンピュータを直接つなぐ技術です。文書作成の将来については昨秋の論文で、記号処理と機械学習を組み合わせるニューロシンボリックな手法を論じたと述べています。
2076年を見通す手がかりとして示したのが、過去50年の三つの流れです。ハードウェアはメインフレームからミニコンピュータ、パソコン、スマートフォンへと移りました。ソフトウェアは手続き型のコーディングからルールエンジン、言語モデルを経て、ライブコーディングの段階にあります。
三つ目は弁護士の態度です。無知と回避から消極的な利用、一部の熱心な導入へと移り、今後は過度の依存、さらには「隷属」もありうると同氏は見ます。三つを組み合わせれば2076年の姿は描きやすいとしながら、持ち時間が尽きたため答えは来年に持ち越すと述べ、講演を締めくくりました。
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