証言録取の指定作業をAIが下書き、弁護士が求めた4条件
リーガルテック企業の発表を取り上げる番組「LawNext PR」を配信するLawNextが、動画「Opus 2 Ingenuity Brings Agentic AI to Deposition Designations」を公開しました。司会のBob Ambrogi氏が訴訟向けケース管理ソフトを提供するOpus 2のYael Hollander De Groot氏に話を聞いています。テーマは証言録取書から公判で使う箇所を指定する作業を、AIがどう支援するかです。
指定作業の負担
デポジション(証言録取)は米国の訴訟で公判前に行われる手続きです。当事者が証人を呼んで質問し、その様子は音声と映像で記録されます。終了後に作られる証言録取書は50〜400ページに及ぶというのがHollander De Groot氏の説明です。弁護士はその中から公判で使いたい箇所を選びます。これが「指定(designation)」で、相手方と裁判所に使う部分を予告する役割を持ちます。
証人が複数いれば録取書も増え、読む量はさらに膨らみます。同氏はこの作業を「公判準備の中でも特に時間がかかり、失敗の許されない工程」と位置づけています。どの箇所を指定するかは訴訟戦略そのものであり、弁護士の判断が勝敗を左右するためです。製品諮問委員会とのワークショップで訴訟業務を洗い出した結果、AIを組み込む候補として最優先に挙がったのがこの作業でした。
AIに渡す情報
新機能では利用者が録取書を選ぶと、AIが案件の争点を踏まえて指定候補を示します。弁護士は候補ごとに採否を決め、範囲が広すぎたり狭すぎたりすれば編集もできます。同氏が強調するのは、公判で何を使うかの最終判断を弁護士に残した点です。元弁護士として「その判断を弁護士の手元に置くことの大切さを知っている」と語ります。
開発で悩んだのはAIにどこまで文脈を与えるかでした。Opus 2は重要書類に加え、時系列表や人物表、争点表といったワークシートの情報を保持しています。当初はそのすべてをAIに渡しましたが、結果は良くならず処理費用もかさみました。対象の録取書と争点表の争点・説明だけに絞ったところ、性能は変わらず費用は大きく下がったといいます。
信頼を支える4要件
同社は試作品を顧客に見せながら開発を進めました。同氏は当初、顧客の関心は精度と時間短縮に集中すると考えていたそうです。実際には信頼をめぐる議論も同じくらい多く、AIがなぜその箇所を提案したのか、自分たちがどう主導権を保てるのかを顧客は知りたがったといいます。
そこで4つの要件を設計に反映しました。1つ目は提案の根拠を示せること、2つ目は指定を録取書の該当箇所に結びつけ文脈の中で確認できることです。3つ目は弁護士が採否を決める人間による管理で、4つ目は監査可能性です。アソシエイトが承認した指定をパートナーが見直す際に、誰がいつ承認したかを確認できる監査証跡を加えたと説明しています。
見落としへの懸念
大手顧客へのデモの後、あるアソシエイトから「AIが何も見落としていないとどう確信できるのか」と問われたそうです。同氏はこれを妥当な問いと受け止め、AIは弁護士の精査を補うもので置き換えるものではないと答えました。白紙から読むより、優秀なインターンが一次チェックを済ませた候補から始めるほうが楽だという説明です。自分では気づかなかった箇所を示す「もう一つの目」になる点も利点に挙げています。
相手方の指定への対応にも使えます。最初のラウンドで自分の争点を支える箇所を指定し、続くラウンドで相手方の指定を取り込むという手順です。このときAIは争点の代わりに相手方の指定を文脈として受け取り、反対指定や異議の候補を示します。同社はこの流れを長年手作業向けに提供しており、その蓄積にAIを加えた形だと同氏は語ります。
本記事は掲載時点の情報です。発言の引用は日本語に訳しています。