士業チューブ
業界動向Lawyerist米国

判例は無料で読めるべき、米非営利団体がAI接続で広げる利用

判例や裁判記録を誰でも無料で使えるようにする取り組みについて、米国の法律事務所経営を扱うポッドキャスト Lawyerist で、非営利団体 Free Law Project を運営するマイク氏がホストのザック氏と語りました。判例検索サイト CourtListener が生成AIとつながったことで利用が広がる一方、同団体は裁判所や公設弁護人向けの仕組みづくりにも踏み出しています。

この記事のポイント
  • 判例検索サイトCourtListenerはMCP経由でClaudeやChatGPTから使え、データ取得要求は毎秒約30件です。
  • 本人訴訟向けの書式作成支援は裁判所が自ら導入・運営する形で、すでに4つの裁判所が参加を決めています。
  • PACERは1ページ10セントで近く12セントに上がり、RECAPで他者が購入した文書を無料入手できます。
Lawyerist / 公開 2026/11/05 / 25分 / YouTube で見る

判例を囲い込まない

Free Law Project は技術とデータで司法制度を良くすることを目指す非営利団体です。中心となる事業は判例検索サイトの CourtListener で、2009年から形を変えながら運営されてきました。マイク氏は米国の判例がこれまで閉じた商用プラットフォームの中にあったと指摘します。「法がどう解釈されているかを知らずに、どうやって法に従えというのか」と問題意識を語ります。

同団体は判例の一括ダウンロードも提供しており、自らが新たな囲い込みになることを避ける方針です。現在はデータの取得要求が毎秒約30件あるといいます。AIにコードを書かせる手法が広まった今、データを公開すれば人々が独自の工夫で使い始めるというのがマイク氏の見方です。他者が同団体の仕組みの上に自分のサービスを築くことを歓迎していると話します。

収録範囲と引用の網

無料の判例には必要な判決が欠けているのではないか。この問いはよく受けるとマイク氏は認めます。2018年までは Harvard が蔵書をスキャンしたデータを取り込み、それ以降は同団体が約200万ページをスキャンして追加する予定です。さらに約200の裁判所サイトを即時に収集し、未公刊の判決や当日の判決も取り込んでいます。判例集からしか得られない引用情報を補えば、ほぼ揃うと説明しています。

CourtListener は MCP(Model Context Protocol、生成AIを外部データにつなぐ規格)経由で Claude や ChatGPT からも利用可能です。ある判例から3段階先までの引用関係をグラフにするよう Claude に頼むと、数分で作ってくれるとマイク氏は紹介しました。判例が覆されたかを示す機能は来年初めの公開を目指し、開発に約2年をかけています。ただ弁護士からは「どうせその警告表示は信用していない」と言われることもあるそうです。ザック氏も、判決を読んで責任を負うのは弁護士自身だと応じました。

本人訴訟と公設弁護人

同団体は数年前、初の部門となる Justice Initiatives を立ち上げました。マイク氏は資本主義を肯定しつつ、「金銭の追求が正義の追求につながるとは限らない」と語ります。弁護士を雇えない本人訴訟の当事者は対価をほとんど払えず、市場が成り立ちにくい領域です。公設弁護人は人の人生を預かりながら道具が最も貧弱で、検察側は優れた道具を持っていると指摘しています。

本人訴訟向けに開発中の仕組みは、裁判所が自ら導入して運営する形をとります。利用者は氏名変更や立ち退きなど自分の問題を選び、書式の作成支援を受ける流れです。AIを使う方式と従来型の方式を選べ、裁判所が承認した手順書も付く設計です。すでに4つの裁判所が参加を決めており、さらに協力先を探しているといいます。

PACERを逆さに読む

RECAP は連邦裁判所の電子記録システム PACER のつづりを逆にした名前のブラウザ拡張機能です。利用者が PACER で購入した文書の写しが同団体に送られ、ほかの人が過去に購入した文書は無料で入手できます。こうして連邦裁判所の提出書類のアーカイブが育ちます。マイク氏は「利己的でも利他的でも、その両方でもよい」と語り、導入を呼びかけました。

判決自体は本来無料で掲載されるはずですが、書記官が無料の設定を忘れて有料になることが多いといいます。PACER の料金は1ページ10セントで、近く12セントに上がります。マイク氏は「裁判所に入るのにお金は取らない。裁判所のウェブサイトの利用にも取るべきではない」と語ります。1文書50ドルほどと記憶する、より高額な別の記録システムにも RECAP を広げる考えを示しました。

本記事は掲載時点の情報です。発言の引用は日本語に訳し、引用の横の時刻からその場面を再生できます。