売上12億ドルの名門が数週間で解散協議へ、Weil Gotshalの教訓
売上約12億ドルで借入金もないと伝えられる米大手法律事務所Weil, Gotshalが合併交渉の決裂を経て解散の協議に入りました。Thomson Reuters InstituteのポッドキャストClarityでは、同研究所トップのMike Abbott氏とFTI ConsultingのMark Wasserman氏が、健全に見えた事務所がなぜ短期間で崩れたのかを話し合いました。
- 米国の倫理規則は競業避止を禁じ、弁護士は金曜の朝に別の事務所へ移ることもできます。
- 仕事の5%以上を握るパートナーが2人抜ければ収入の10%以上が消え、数字は急速に悪化します。
- 合併は余力のあるうちに行うべきで、主要パートナー15〜20人の戦略合意を確かめるべきだと指摘。
健全な財務と急な瓦解
司会のAbbott氏はまず経緯を整理しました。Weilは昨年約12億ドルの収入を上げ、借入金もないと報じられていた事務所です。9月には事務所内から合併協議を否定する発言がありました。ところが10月19日にはパートナーが合併の基本合意書を交渉しており、数日後に破談となって解散や清算の話が出ています。収録時点で解散の採決はまだ行われていません。
Wasserman氏はEversheds Sutherlandでマネージングパートナーを20年務めた人物です。同氏はWeilの関係者と近しいわけではないと断ったうえで、今回は不正や明らかな戦略の失敗によるものではないとみています。だからこそ業界全体が不安を感じているとし、「法律事務所は壊れやすい存在だ」と述べました。
競業避止を置けない米国
壊れやすさの背景として同氏が挙げたのは、米国の弁護士倫理規則です。この規則は弁護士の業務を制限する取り決めを禁じており、事務所は競業避止義務を課せません。英国ではガーデン・リーブ(退所前の一定期間、業務から離れさせる仕組み)や組合契約の制限条項により、一定期間の業務を止められると説明しています。
米国では弁護士が金曜の朝に通りを渡り、別の事務所で仕事を始めることもできます。建前では依頼者は事務所の顧客であり、離脱を公表するまで移籍の話をしてはならないというのが原則です。それでも依頼者は、自社の取引の進め方やリスク許容度を知る弁護士についていきがちだと同氏は指摘しました。
金銭より戦略の不一致
報道には高い報酬を求めた移籍とみる論調もありますが、同氏はこれに否定的です。Weilには事務所の仕事の5%以上を握る主要パートナーが複数いたとみられ、2人抜ければ収入の10%以上が消えます。コストは同じ割合では減らないため、数字は急速に悪化すると説明しました。
同氏が問題の中心とみるのは、有力パートナー間の戦略上の不一致です。9月には次期リーダーとされた人物が就任しないと表明し、事務所の方向性をめぐる意見の違いも伝えられていました。同業の比較対象に見劣りするとの評価に戦略変更の見通しが重なり、離脱を後押ししたと同氏は分析しています。「もっと払う事務所は常にある」とも語っています。
窮地の合併と各事務所の課題
Willkieとの合併協議については、交渉内容が外部に漏れていた点を挙げ、どちらかの側に反対者がいた表れだとみています。法律事務所には有形資産がほとんどなく、合併しても人が残る保証はありません。Dewey & LeBoeufの破綻では残留ボーナスが裏目に出たと振り返り、合併は余力のあるうちに行うべきだと述べました。
同氏は今回を一度きりの出来事とはみておらず、各事務所の代表が内部の対話を強めているはずだと話しました。自分が事務所にいれば、主要パートナー15〜20人が戦略に合意しているかを改めて確かめると言います。今回の件はAIとは無関係としつつ、AIへの対応も同じ種類の戦略的な議論を要すると付け加えました。
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