会計事務所を顧客に据え直す、Intuitの月次決算エージェント
米国のIntuit Accountantsチャンネルが公開した「Watch the Intuit Connect Welcome Keynote」では、同社に22年在籍するという幹部が会場とオンラインの会計専門家に向けて戦略を語りました。会計事務所を販売経路から「顧客」へと位置づけ直し、AIエージェントで月次決算や助言業務を支えるという構想が講演の中心です。
販売経路から顧客へ
登壇者はまず「あなた方が顧客です」と切り出しました。同社は長年、会計事務所を製品を広めてもらう大切なパートナーや販売経路として見てきたといいます。その考え方を1年あまり前に改め、取締役会や投資家にも伝えたと説明しています。毎年1万5,000人の人員と数十億ドル規模の投資を、事務所との共同開発に振り向けるとのことです。
構想の軸となるのは統合された知的な基盤です。片側に事務所の業務や職員、顧問先を管理するIntuit Accountant Suite、もう片側に創業期から売上数億ドル規模までの顧客企業が位置づけられています。基盤はデータ、業種別の業務フロー、エージェントの三層で構成され、同社はこれをIntuit Intelligenceと呼びます。データは利用者のものであり「私たちのデータではない」とも強調していました。
手順書で動く決算処理
事務所から寄せられた要望は、目新しさより最大の手作業を自動化してほしいというものだったそうです。請求できる作業時間が今後確保しにくくなるなかで、助言業務を広げたいという声もあったといいます。紹介された機能は提供中か、今後3〜6か月以内に提供予定とされています。
最初に示されたのがAgentic Books Closeです。日々の取引処理から貸借対照表と総勘定元帳の照合までを、事務所ごとの標準業務手順に沿って進めます。既存の手順書をアップロードすると業務フローが作られ、各工程を調整できます。エージェントは進捗を示して確認が必要な点を知らせ、顧問先に送る財務サマリーの準備まで担うと説明されました。
続くAgent Studioは、事務所が独自のエージェントを作成し、配備と監視まで行う機能です。例として建設業の保留金管理が挙げられました。工事の節目に達するまで支払いを留保する契約条件に沿って管理方法を指示し、建設業の顧問先全体に配備する使い方です。約20の事務所と開発中で、技術的な知識は要らないと登壇者は述べています。
顧問先分析と外部AI連携
顧問先全体のデータを継続的に分析し、異常値や経費の急増、利益の下降傾向を知らせる機能も紹介されました。担当者は質問を重ねて原因を探り、次の対応の提案を受けられます。事務所の設定に沿って助言業務の提案資料も作るとされ、登壇者は事務所の指示で動く「エージェントと人のチーム」と捉えてほしいと語ります。
新規顧客の獲得も支援の対象です。中小企業向け会計ソフトQuickBooksの利用企業が一定の複雑さに達すると、会計事務所を探すよう促し、条件の合う事務所と結びつけます。会計事務所とつながった企業のほうが業績も継続率も高いと同社のデータで分かっていると、登壇者はその根拠を示しました。
今後数か月の取り組みとして、Intuit以外の総勘定元帳やアプリとの接続も挙げられました。Microsoft CopilotやClaude、ChatGPTを使う事務所が、そこからAccountant Suiteを利用できるようにするといいます。デモではClaudeがAIと外部ツールをつなぐMCPの仕組みで顧問先データを取得し、承認を得て対応を進める流れが示されました。
示された利用実績
登壇者によると、Intuit Accountant Suiteを使う事務所は26万を超えます。顧問先1件あたり月9時間以上の削減があり、助言業務に充てる時間が30%増えたという報告も多いそうです。いずれも今回の新機能を含まない現時点の数字だと説明しています。
顧客企業向けには従業員を増やせるか、在庫を買い足せるかといった質問にAIが答える機能が示されました。深い専門性や判断が要る場面では会計事務所につなぐ設計です。中堅企業向けのIntuit Enterprise Suiteでは、売上2,000万ドル超の利用企業が2万5,000社以上あり、月約2日の時間削減が報告されているといいます。
本記事は掲載時点の情報です。発言の引用は日本語に訳しています。