「AIでできるのでは」と問う顧客に、会計事務所はどう答えるか
米国の会計ソフト大手Intuitのチャンネル Intuit Accountants は、同社のイベントIntuit Connectでのパネル討論「Watch the Shaping the Future of Accounting Panel from Intuit Connect」を公開しました。7人の小規模事務所からプライベートエクイティ(PE)傘下の大規模事務所まで、4人の経営者が登壇しています。AIで作業が減るなかで事務所の価値をどう示し、職員をどう導くかが議論の中心です。
報酬と価値の問い直し
マイアミで7人の記帳代行事務所を営むHector Garcia氏は、顧客から「AIでできるのでは」と問われたことが最近で最も難しい質問だったと語ります。最初は技術的な可否を答えようとして言葉に詰まったそうです。のちに、その真意は作業が減ったなら報酬も下がるべきではという点にあると気づいたといいます。
同氏はこの問いに「そうであってほしい」と答えるべきだと述べます。価値は投入した労力では測れず、AIの処理時間で請求すればナノ秒単位になり事務所が立ち行かないためです。PE傘下の事務所を率いるMatthew氏も、顧客が依頼する理由はコンプライアンスと経営判断の支援の二つだと整理しました。これほど多くのデータを扱える時代はなく、5年後には顧客をより良く支援できると考えているそうです。
AI業務監査という新サービス
アトランタ近郊でConscious Accountingを営むNicole Davis氏は、今年AIと自動化のコンサルティングに大きく舵を切りました。新設した「AI業務監査」では顧客の業務全体を点検します。自動化できる箇所やエージェントを作る箇所、人が深く関わるべき箇所を見極めるサービスです。毎月予算を数百時間超過していた建設会社では、重複作業を特定してエージェントを構築しました。その結果、毎月数千ドルを節約できるようになったと説明しています。
Garcia氏は自動化の相談を受けて、顧客自身が何を望むか分かっていない場合が多いと気づいたそうです。技術をいったん脇に置き、標準作業手順書(SOP)の有無や手順の理由を分解していきます。その過程で「AIはそれほど要らず、業務を整えればよい」と気づいて帰る顧客もいると語ります。
データ整備から始める
Matthew氏は数百人規模のAI導入をどこから始めるかについて、データを整理し使える状態にすることだと答えました。40の事務所を同時に統合しており、約400のQuickBooks Online(Intuitのクラウド会計ソフト)の環境を一つに集約しています。文書もSharePointの共通環境に移している最中です。一見AIと無関係な作業ですが、AIへの備えと職員の支援の両方につながると説明しています。
コロラド州ボルダーのFull SendでCEOを務めるRoman氏は、記帳や外部CFO業務の受託から出発し、データサイエンティストを採用しました。その部門は現在、AIコンサルティングや顧客向けの独自アプリ開発へと移行しています。同氏は会計士を「本来データアナリストだ」と表現します。取引データを整え、照合し、可視化して報告している点がその根拠です。
職員を導く工夫
Matthew氏は来年の予算で、業務手順の文書化、変化への対応を担う役割、研修の三つを検討していると述べます。変化には余分な労力が要り、それ自体が「間違っている」と感じられるため、敬意をもって臨むべきだと語りました。Roman氏は採用で問題解決力と関係構築力を重視し、その前提として好奇心とコミュニケーションを挙げています。
Davis氏はすでに解決した課題をAIに解かせ、自分の答えと比べる練習から始めるよう勧めています。Garcia氏は顧客データの安全性を気にする人のために、相互に整合した練習用の銀行明細や請求書を生成するアプリを作りました。試して失敗し、AIの誤った出力を見る過程こそが学びになると語ります。
本記事は掲載時点の情報です。発言の引用は日本語に訳しています。