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Legal AI Labオランダ

訴訟を固定報酬で受ける、AIネイティブ法律事務所の設計

Legal AI Labの動画「Arvid van Oorschot & Jelle Drok - Building an AI-Native Law Firm From Scratch」に、特許・技術訴訟を20年以上扱ってきた弁護士2人が出演しました。アムステルダムで開いたDriven Lawyersの設計を語っています。話の中心は自作のAIに起案を担わせ、訴訟を固定報酬で受ける仕組みです。

Legal AI Lab / 公開 2026/10/27 / 58分 / YouTube で見る

起案時間の圧縮

ドロック氏はFreshfieldsのパートナーでした。ファン・オールスホット氏は知財専門のブティック事務所Vondstのパートナーでした。新事務所でまず手放したかったのは書面の起案だと語ります。訴状や答弁書を白紙から書けば、運がよくても4〜5日かかっていたといいます。

今はAIと先に対話して考え抜き、そのうえで第一稿をAIに書かせる流れです。ボタン一つで済むわけではないものの、作業量は大きく減ったと説明しています。浮いた時間で、最終的に法廷で何を主張するかを初日から考えるそうです。審理前日に訪れがちな「シャワー中のひらめき」を前倒ししたいと語ります。

この働き方を2人は「AIファースト」とは呼びません。運転席に座り、指示を出すのはあくまで弁護士だという立場です。ハンドルをAIに渡せば「すぐに道を外れる」とも述べ、弁護士はむしろ増えるだろうとの見通しを示しました。

固定報酬の見積もり

料金は時間制報酬をやめ、固定報酬にしています。開業前に潜在顧客を回った際、時間制をなくしたい、透明性がほしいという声が多かったといいます。代替的な報酬体系の議論は以前からありました。AIによって「時間の工場」でなくなったことが、実現を後押ししたと説明しています。

相手方の出方が読めない訴訟で固定報酬が成り立つのかという問いには、経験から各手続の展開を見積もれると答えます。反訴のように前提が変わる事態は依頼者と事前に話し合う運用です。全体の固定が難しければ、訴状など書面ごとに価格を示すそうです。むしろ低く見積もりすぎるおそれが大きいとしつつ、そのリスクは引き受けると語ります。

経験を写すフレームワーク

自作ソフトDriven Drafterの中核は、2人が「フレームワーク」と呼ぶ高度なテンプレートです。主要な書面について約100種類あり、ナレッジグラフでつながっています。定型文言のほか、当事者の呼称を書面間でそろえるプレースホルダーを備えます。裁判所の手続規則とも連携し、規則が変われば自動で反映される仕組みだという説明です。

完成した書面を元のフレームワークと比べ、LLMに教訓を抽出させる仕組みもあります。表記の統一といった細部から、特定の法的根拠で避けるべき主張まで学ばせるといいます。一方で最も写しにくいのは、どの主張が通るかという判断の部分だそうです。

そこで教え込んでいる原則の一つが皿の比喩です。おいしそうなケーキの横に汚物が一つあれば誰も手を出さないように、悪い主張一つが全体を損なうと語ります。訴訟ではAIの幻覚より、時に出す愚かな主張のほうが深刻だという見方です。書面ごとに反論を書かせる「devil's advocate」機能で、弱点も洗い出しています。

若手育成と事務所の将来

若手は必要だが大手ほどの人数は要らないとし、かつての徒弟制のように一対一で育てる構想を示しました。技術にまったく関心のない志望者は難しいといいます。AIの出力は全部読むよう求め、埋もれた一文を見落とすと作業が止まってしまうと説明しています。

ファン・オールスホット氏はLLMとは別に自前のオンプレミスモデルも育てていると話しました。ドロック氏も、秘匿特権の観点から各事務所が自前の機器にモデルと知見を置く方向に進むとみています。共同創業者の一人は、時期は1〜2年とみつつ「どの事務所もこの働き方になる」と述べました。

本記事は掲載時点の情報です。発言の引用は日本語に訳しています。